前歯が欠けた・すり減った方へ。自然に仕上げる部分セラミック修復とは?
- 2025年11月15日
- 審美歯科
目次
前歯の形に悩む方へ──見た目の違和感が生まれる理由
前歯の「形」や「長さ」が気になるのはなぜ?
前歯は顔の中心にあり、笑顔や会話の印象を大きく左右するため、わずかな形の違いでも「なんとなく気になる」と感じやすい部位です。特に、左右の長さがそろっていない、角が丸すぎる・尖りすぎている、全体のバランスが崩れているなどの状態では、見た目に違和感を覚えやすくなります。こうした前歯の形の変化は、歯のすり減りや小さな欠け、過去の詰め物の劣化、歯並びのズレなど、複数の要因が複合的に関係しています。また、光の反射や透明感の違いによっても、隣の歯との調和が乱れて見えることがあります。特に前歯は「1mmの差」で印象が変わるほど繊細な部分であり、自然な形状を保つには専門的な診断と微調整が欠かせません。見た目の違和感を感じた時点で、早めに歯科医師へ相談することが、美しい口元を保つ第一歩です。
加齢や歯ぎしりが前歯の形を変えるメカニズム
年齢を重ねると、長年の噛み合わせや咬合圧の影響で、前歯の先端がすり減り、形が平らになる傾向があります。これは、エナメル質が摩耗して内部の象牙質が露出することで、光の透過性が変化し、歯の色やツヤにも影響を及ぼすためです。また、日常的な歯ぎしりや食いしばりも、前歯の形を変える大きな原因です。特に、睡眠中の歯ぎしりは自覚しにくく、知らないうちに歯先が欠けたり、角が丸くなったりします。さらに、こうした摩耗や欠けを放置すると、噛み合わせ全体のバランスが崩れ、顎関節や首の筋肉にも負担がかかることがあります。部分的なセラミック修復やマウスピース治療などを併用し、「歯を守る+形を整える」アプローチをとることで、見た目と機能の両立が可能になります。
コンプレックスが笑顔や印象に与える心理的影響
前歯の形や欠けを気にして笑顔を控えてしまう方は少なくありません。とくに写真撮影や会話の際に「口元を見られるのが恥ずかしい」と感じることで、自信の低下や人前での表情の硬さにつながることがあります。実際、心理学的にも口元の印象は対人関係における「第一印象」を左右する要素のひとつとされています。前歯が欠けたままやすり減ったままでは、笑顔全体の調和が崩れ、実年齢より老けて見えることもあります。こうした心理的負担を軽減するには、見た目の改善だけでなく、「自然に噛めて安心できる」機能面の回復も重要です。部分セラミック修復などの治療は、自然な透明感と滑らかな形状を再現し、笑顔の印象をより良く見せる選択肢となります。歯科医師と相談しながら、見た目と自信を取り戻す一歩を踏み出しましょう。
前歯が欠けたりすり減ったりする仕組みを知る
噛み合わせや咬合圧による微細なダメージ
前歯は食べ物を切る役割を担っており、日常的に力が加わる部位です。正常な噛み合わせでは力が均等に分散されますが、咬合のバランスが崩れると一部の歯に過度な負担がかかり、微細なひびや欠けが生じやすくなります。特に、下の前歯が上の歯に強く当たる「早期接触」や、噛むたびに前歯だけで咬合力を受け止めている場合、エナメル質の摩耗が進行し、角が丸くなったり先端が欠けたりすることがあります。また、長期間にわたる小さなダメージの積み重ねは、目には見えない内部の亀裂として残り、将来的に欠けやすくなる原因になります。こうした咬合性のトラブルは、歯ぎしりや食いしばりなどの習慣とも密接に関係しており、単なる「見た目の変化」として放置せず、早期に歯科医師による噛み合わせチェックを受けることが大切です。
外傷や食いしばりによる前歯の欠け・摩耗
前歯の欠けや摩耗は、外的な力によって突然生じる場合と、日常の癖によって徐々に進行する場合の2つに分けられます。転倒やスポーツ中の衝突による外傷はもちろん、無意識のうちに行う歯ぎしり・食いしばりも深刻なダメージを与えます。食いしばりでは、自分の体重に近い強い力が歯にかかり、エナメル質が圧迫・摩耗されます。その結果、歯の先端が削れたり、透明感が失われて黄ばんで見えたりすることもあります。また、欠けた部分を放置すると、その部分に汚れや細菌が溜まりやすくなり、むし歯や歯肉炎のリスクも高まります。部分セラミック修復によって早期に補修することで、自然な見た目を取り戻すだけでなく、これ以上の損傷を防ぐことができます。
エナメル質の薄れが「形の乱れ」を目立たせる理由
前歯の表面を覆うエナメル質は、人体の中でもっとも硬い組織ですが、年齢や摩耗によって徐々に薄くなっていきます。エナメル質がすり減ると、その下の象牙質が露出し、歯の透明感が失われて黄色味を帯びて見えるようになります。また、エナメル質が部分的に失われると、光の反射のバランスが崩れ、隣の歯との境界が目立ちやすくなります。これにより、「歯が短く見える」「形がいびつに感じる」といった印象が強くなるのです。さらに、薄くなったエナメル質は衝撃に弱く、欠けやひび割れの再発リスクも高まります。こうした場合、部分セラミック修復を行うことで、欠損部分を自然に補いながら強度を回復させ、本来のツヤと滑らかな輪郭を再現することが可能です。定期的なチェックと早期対応が、前歯の健康と美しさを長く保つ鍵となります。
自然な見た目を再現する部分セラミック修復とは
歯の健康な部分を残して美しさを補う治療法
部分セラミック修復とは、欠けた前歯やすり減った部分を必要最小限だけ削り、セラミック素材で補う治療法です。従来の被せ物治療(クラウン)と違い、健康な歯をできるだけ残すことを重視する点が大きな特徴です。歯を大きく削ることなく、欠損部だけを精密に修復するため、歯の寿命を守りながら自然な見た目を再現できます。特に前歯の一部が欠けた場合や、古い詰め物で色が浮いているケースでは、この方法が有効です。また、部分修復では歯型採取や色合わせの精度が重要であり、歯科技工士と連携しながら一人ひとりの歯に最も調和する仕上がりを目指します。自然光の下でも違和感のない透明感と質感を再現できるため、修復部が目立ちにくく、美しさと機能性を両立させることが可能です。
セラミック素材の特性と天然歯との調和
セラミックは、天然歯に近い透明感と光沢をもつ審美素材であり、金属を使用しないため金属アレルギーの心配もありません。素材の表面は非常に滑らかで、プラーク(歯垢)が付きにくく、変色しにくいという衛生的な利点もあります。また、光の反射や透過性が天然歯と似ているため、隣の歯との境目が自然に馴染みます。前歯のように光が当たりやすい部分では、この「光の再現性」が自然な見た目を作り出す重要な要素となります。さらに、セラミックは強度が高く、咬合圧(噛む力)にも耐えられるため、長期的な安定性も期待できます。ただし、強い衝撃が加わると割れる可能性があるため、治療後は定期的な噛み合わせチェックやメンテナンスが欠かせません。見た目の美しさだけでなく、耐久性や口腔内環境へのやさしさからも、セラミックは前歯修復に適した素材といえます。
前歯1本からでも行える「部分修復」の適応範囲
部分セラミック修復は、前歯1本からでも行える精密な審美治療です。適応範囲は広く、小さな欠けや摩耗、変色、古い樹脂(レジン)の劣化による見た目の違和感まで対応できます。特に「歯の一部だけ欠けた」「境目が目立つ」「レジンの色が浮いている」といったケースでは、削る量を最小限に抑えながら自然な見た目を回復できます。一方で、歯の欠損が大きい場合や神経に近い深い損傷がある場合は、部分修復ではなくクラウン治療を検討することもあります。そのため、治療前には精密な診査診断を行い、歯の残存量や噛み合わせの状態を確認することが重要です。部分セラミック修復は、美しさだけでなく、「歯を長持ちさせる」ための選択肢としても注目されており、前歯の審美性を自然に整えたい方に適した治療法といえます。
どんな状態なら部分セラミック修復が向いているか
欠け・摩耗の大きさからみる治療の選択基準
部分セラミック修復は、前歯が「一部だけ欠けた」「角がすり減って形が不揃い」といった軽度から中等度の損傷に適しています。歯全体を覆うほどの大きな破折や神経近くまで達する深い損傷では、クラウン(被せ物)治療を検討する場合もありますが、部分的な欠損であれば、健康な歯を多く残したまま自然な見た目を回復できます。また、歯ぎしりや噛み合わせの癖による小さな摩耗も対象になりますが、その場合は修復だけでなく、マウスピースなどで再発予防を行うことが望まれます。治療の判断は「欠けの深さ」「歯質の残存量」「咬合力の分散状態」などを総合的に評価して行われます。部分修復は、削る範囲を最小限に抑えつつ、美しさと機能を両立できる治療法といえるでしょう。
変色・詰め物跡など審美面の改善が必要なケース
部分セラミック修復は、見た目の悩みにも効果的です。たとえば、過去に行ったレジン修復(プラスチック素材)が黄ばんできた、境目が浮いて見える、光の反射が不自然といった場合です。セラミック素材は光の透過性が高く、天然歯に近い質感を再現できるため、隣の歯との境界が自然に馴染みます。特に前歯は顔の印象を大きく左右するため、審美性の回復は心理的な満足度にもつながります。また、部分的な着色や小さな表面のひびなどもセラミックで滑らかに整えることで、全体のトーンを均一に見せることが可能です。単なる「修復」ではなく、「自然な美しさを再構築する治療」として、部分セラミック修復は審美歯科領域で高く評価されています。
根本的な噛み合わせ調整が必要な場合との違い
部分セラミック修復はあくまで歯の形態や見た目を整える治療であり、噛み合わせの根本的なずれや顎関節の問題を直接改善するものではありません。もし、前歯の欠けや摩耗の原因が「咬合バランスの乱れ」「食いしばり」「顎関節症」などにある場合は、まずその根本原因を特定し、必要に応じて咬合調整やスプリント(マウスピース)治療を併用することが重要です。原因を解消せずに修復だけを行うと、再びセラミックが欠けたり、修復部に負担が集中する可能性があります。したがって、部分修復を行う前には、歯科医師が咬合状態を精密に分析し、全体のバランスを見極めたうえで治療計画を立てることが大切です。見た目の回復だけでなく、「噛める・長持ちする」修復を実現するためには、機能と審美の両面からのアプローチが欠かせません。
前歯のセラミック修復の流れと治療期間の目安
初診カウンセリングで確認すべきポイント
前歯のセラミック修復を検討する際、最初のステップとなるのが初診カウンセリングです。ここでは、歯の欠けや摩耗の状態、噛み合わせ、周囲の歯や歯ぐきの健康状態を丁寧に確認します。セラミック修復は見た目の美しさだけでなく、長期的な安定性にも関わるため、「なぜ欠けたのか」「どの程度の修復が必要か」を明確にすることが大切です。また、患者さんの希望する仕上がり(色味・形・質感)をヒアリングし、治療法の選択肢や費用、治療期間についても詳しく説明します。この段階で不明点を解消し、医師とのイメージをすり合わせることが成功の鍵です。写真や模型を用いたシミュレーションを行う医院もあり、完成イメージを共有することで、より自然で満足度の高い仕上がりにつながります。
型取りから装着までの一般的なステップ
治療は通常、以下の流れで進行します。まず、欠けや古い詰め物を除去し、部分的に形を整えたうえで歯型を採取します。次に、その歯型をもとに歯科技工士がオーダーメイドのセラミック修復物を作製します。製作には1〜2週間程度かかることが多く、その間は仮歯を装着して日常生活を送ります。完成したセラミックは、色調や形態を微調整したうえで接着剤によって装着されます。接着には専用のボンディング材を使用し、天然歯との境目がほとんど分からないよう精密に仕上げます。全体の治療期間は、初診から装着までおよそ2〜4週間が目安です。ただし、欠け方の大きさや噛み合わせの調整が必要な場合は、期間が延びることもあります。
仮歯期間の過ごし方と仕上がりの確認方法
セラミック修復の仮歯期間は、見た目と機能を一時的に補う重要な期間です。仮歯はレジン(樹脂)製でやや脆いため、硬い食品や粘着性のあるものを避け、強い咬合圧をかけないよう注意しましょう。この期間中に「噛み合わせが高い」「話しにくい」「違和感がある」などを感じた場合は、すぐに担当医に相談することが大切です。仮歯を使うことで、最終的なセラミック装着後の感覚を事前に確認でき、形態や色調の微調整にも活かされます。また、最終装着時には光の当たり方や周囲の歯との調和を丁寧に確認し、必要であればその場で修正が行われます。治療後も定期的なメンテナンスを行うことで、自然な見た目と快適な噛み心地を長く維持できます。
治療後の「自然さ」を左右するデザインと技術
歯の形・透明感・色調を再現する審美設計
前歯のセラミック修復では、単に欠けた部分を補うだけではなく、「隣の歯との一体感」や「表情との調和」までを追求することが理想です。そのため、治療では歯の形態、透明感、色調、光の反射を含めた総合的な審美設計が欠かせません。歯の形はわずかな曲線や角度の違いで印象が変わり、丸みを帯びたデザインは柔らかく優しい印象を、直線的なデザインは知的で整った印象を与えます。また、天然歯のエナメル層は先端ほど光を透過しやすく、内部には象牙質の黄みが重なって複雑なグラデーションを生み出しています。こうした構造を再現するために、セラミックは複数層に分けて焼成し、厚みや色合いを細かく調整します。さらに、肌の色や唇のトーン、表情時の光の入り方まで考慮して設計することで、「作り物ではない自然な前歯」を実現できます。
技工士と連携した精密なシェードマッチング
セラミック修復の完成度を左右する最大の要素のひとつが「シェードマッチング(色合わせ)」です。歯科技工士が歯科医師と密に連携し、患者さんの歯の明るさ、透明感、光沢、内部の色層まで丁寧に観察します。単にカラーチャートを当てるだけではなく、歯の表面にある微細な模様や光の反射の違い、時間帯や照明による色の見え方まで考慮して製作します。特に前歯は笑ったときや会話中に光を受けやすいため、反射角度による色味の変化も再現する必要があります。症例によっては、技工士が直接立ち会い、口腔内写真や肌の色、唇とのバランスを確認しながら製作を進めます。このように、歯科医師と技工士がチームで取り組むことで、周囲の歯と見分けがつかないほど自然な仕上がりを実現できます。
顔全体との調和を考えた前歯デザインの考え方
前歯は顔の中心に位置し、表情全体の印象を大きく左右するパーツです。したがって、前歯のデザインは単に「白く美しい歯」を目指すのではなく、「顔全体との調和」を重視して設計することが重要です。唇のカーブ(スマイルライン)や歯列の左右対称性、歯の傾きや長さのバランスなどを整えることで、自然で品のある笑顔が生まれます。また、性別や年齢、顔の骨格によって理想的な歯の形は異なり、女性では丸みを帯びた柔らかいライン、男性ではやや直線的な力強いラインが調和しやすい傾向にあります。さらに、笑ったときの歯の見え方や表情筋の動きまで考慮することで、静止時も動作時も自然な印象を保つことが可能です。歯科医師と技工士が綿密に協力し、機能面・審美面・個性の3要素を融合させることで、単なる修復を超えた「その人らしい笑顔のデザイン」が完成します。
セラミックの寿命を延ばすためのメンテナンス
定期的なチェックで小さなズレを防ぐ重要性
前歯のセラミック修復は、見た目の美しさだけでなく、適切な噛み合わせのバランスが保たれてこそ長期的に安定します。しかし、日常の食事や歯ぎしり・食いしばりなどにより、少しずつ力のかかり方が変化し、セラミックと天然歯の境目にわずかなズレが生じることがあります。このズレを放置すると、咬耗やマイクロクラック(微細なひび)、接着部の劣化につながるおそれがあります。そのため、装着後も定期的に歯科医院で噛み合わせや接着状態をチェックし、必要に応じて微調整を行うことが大切です。通常は半年〜1年に一度のメンテナンスが推奨され、歯科医師が専用機器で咬合バランスを確認します。早期に問題を発見・修正することで、セラミックの破損や脱離を未然に防ぎ、治療結果をより長く維持することが可能になります。
セラミックを長持ちさせるブラッシングとケア
セラミックは変色や虫歯の再発が起こりにくい素材ですが、メンテナンスを怠ると歯ぐきの炎症や歯垢の付着により、見た目や健康を損ねることがあります。歯と歯ぐきの境目やセラミックの周囲には、天然歯と同様にプラーク(細菌の膜)が溜まりやすく、歯肉炎の原因になることも。特に前歯は目立つ位置にあるため、歯ブラシは毛先の柔らかいものを使い、力を入れすぎず丁寧に磨くことが重要です。また、フロスや歯間ブラシを併用して細かい部分の汚れを取り除くことで、セラミックと天然歯の境目を清潔に保てます。歯磨き粉は研磨剤が少ないタイプを選び、コーティング面を傷つけないようにすることもポイントです。毎日のセルフケアと定期的なプロのクリーニングを組み合わせることで、セラミック本来の透明感と輝きを長く維持できます。
噛み合わせ調整・ナイトガードの活用法
セラミック修復を長持ちさせるためには、治療後の噛み合わせ管理も欠かせません。特に、就寝中の歯ぎしりや食いしばりはセラミックに大きな負担を与え、欠けや脱離の原因になることがあります。このような習慣がある方には、歯科医院で作製する「ナイトガード(マウスピース)」の使用が有効です。柔軟性のある素材が咬合力を分散し、セラミックや歯の根にかかる負担を軽減します。また、日中に無意識のうちに噛みしめている場合もあるため、歯科医師の指導のもとで噛み合わせを定期的にチェックし、必要に応じて微調整を行います。さらに、ストレスや姿勢の悪さも噛みしめの要因となるため、生活習慣の見直しも重要です。適切なメンテナンスと噛み合わせ管理を継続することで、セラミック修復を美しく機能的に保ち続けることができます。
治療にかかる費用と保険適用の考え方
保険治療と自費治療の違いを正しく理解する
前歯の欠けや摩耗を治す際、「保険でできる治療」と「自費治療(セラミックなど)」のどちらを選ぶかは、多くの方が迷う点です。保険診療では、レジン(樹脂)による修復が基本で、費用は抑えられますが、時間の経過とともに変色や摩耗が起こることがあります。一方、自費治療ではセラミック素材を使用し、見た目の自然さ・耐久性・噛み合わせの精密さを追求できます。特に前歯のように審美性が求められる部位では、光の透過性や色調の再現に優れるセラミック修復が選ばれることが多いです。ただし、自費治療は保険が適用されないため、費用は医院や素材によって異なります。大切なのは「どの治療が自分の生活スタイルや希望に合っているか」を、歯科医師と十分に相談して決めることです。費用だけでなく、治療後の満足度や長期的なメンテナンス性も考慮することが大切です。
素材・設計の違いによる費用目安
セラミック治療と一口にいっても、使用する素材や修復の範囲によって費用は大きく変わります。たとえば、歯の一部だけを修復する「部分セラミック(インレー・ラミネートベニア)」と、歯全体を覆う「セラミッククラウン」とでは、使用する材料や製作工程が異なります。部分修復は比較的負担が少なく、自然な見た目を保ちやすい点が特徴ですが、欠けの大きさや噛み合わせの状況によっては、より強度のあるクラウンが推奨されることもあります。また、オールセラミックやジルコニアセラミックなど、素材によって透明感や強度、加工精度が異なります。費用の目安としては、部分修復で5〜10万円前後、クラウンタイプで10〜15万円前後が一般的です。ただし、医院の技工精度や審美設計のレベルによっても変動するため、見積もり時には「どの素材で、どんな工程を経て作られるか」を確認することが重要です。
コストよりも「機能と審美のバランス」を重視する視点
前歯の修復治療を選ぶ際、どうしても「費用の高い・安い」で比較しがちですが、長い目で見たときに重要なのは「どれだけ快適で自然に使い続けられるか」という点です。保険治療は初期費用が低く抑えられる一方で、数年後に再治療が必要になるケースもあります。一方、セラミック修復は初期投資が高めでも、摩耗や変色が起きにくく、長期的には再治療のリスクを下げることができます。また、噛み合わせや歯肉との境界部分の精密さによっても、見た目の自然さや清掃のしやすさが大きく異なります。治療費を「一時的なコスト」として捉えるのではなく、「歯の健康を維持するための投資」として考えることが大切です。経験豊富な歯科医師に相談し、自分の希望・予算・将来的なケアのしやすさを踏まえた最適な選択をすることで、機能と審美の両立が可能になります。
よくある質問──前歯セラミックQ&A
部分的な修復でも見た目は自然になりますか?
はい、部分的なセラミック修復でも自然な見た目を十分に再現できます。近年のセラミック素材は透明感や光の反射性に優れ、隣の歯との色調や質感の差がほとんどわからないほど精密に仕上げることが可能です。特に前歯のように光を透過しやすい部位では、天然歯のエナメル質の層構造やわずかなグラデーションを再現することで、周囲の歯と調和した自然な印象を与えます。部分修復は、欠けやすり減りなど限定的なダメージを最小限の削合で補う治療法であり、健康な歯質を多く残せる点も大きなメリットです。また、セラミックは変色しにくく、経年による黄ばみもほとんどないため、長期的にも自然な美しさを維持しやすい素材です。患者様の歯の色・形・位置関係に合わせてオーダーメイドで作製するため、治療部位が目立ちにくい自然な仕上がりを目指せます。
歯を削る量はどれくらい必要ですか?
セラミック修復で削る量は、歯の欠け方や修復範囲によって異なりますが、部分修復(ラミネートベニアなど)では0.3〜0.7mm程度と非常にわずかです。これは爪の厚みほどであり、歯の表面を薄く整えることで、セラミックを正確に密着させるためのスペースを確保します。削る量が最小限に抑えられるのは、セラミックが強度と審美性を両立しているためで、従来の金属やレジンに比べても精密で安定した接着が可能です。歯を大きく削る必要があるのは、欠けや変色が深く、噛み合わせに大きく影響する場合などに限られます。診断時には、歯科医師がCTやマイクロスコープを用いて歯質の厚みや咬合状態を確認し、最も保存的な方法を選択します。目的は「削ること」ではなく、「健康な歯を守りながら美しく機能を再建すること」です。
将来的に再治療が必要になることはありますか?
セラミックは非常に耐久性が高い素材ですが、噛み合わせの変化や歯ぎしりなどの生活習慣によって、長期的には再調整や再治療が必要になる場合もあります。例えば、隣接する歯の位置がわずかに動いたり、噛み合わせが変化すると、セラミックと歯の境目に微細なズレが生じ、汚れの溜まりやすさや歯肉炎のリスクが高まることがあります。そのため、定期的な噛み合わせチェックやクリーニングが推奨されます。また、ナイトガード(就寝時のマウスピース)を併用することで、セラミックへの過度な力を分散し、破損リスクを減らすことができます。適切なメンテナンスを行えば、セラミックは10年以上の長期使用も十分可能です。治療後も歯科医師と連携し、予防的に管理していくことが、再治療を防ぎ、美しい前歯を長く維持するための鍵となります。
前歯の形を整えることは「笑顔」を取り戻す第一歩
見た目の改善がもたらす自信と心理的変化
前歯の欠けや形の不揃いは、見た目だけでなく心の状態にも影響を与えることがあります。会話中に口元を隠してしまう、笑顔を控えてしまうなど、知らず知らずのうちに自己表現が制限されることも少なくありません。そうした悩みを抱える方にとって、セラミックを用いた部分修復は「自然な見た目」を取り戻すだけでなく、自信を回復させる大きなきっかけとなります。セラミックは光を透過する性質があり、天然歯のような透明感を再現できるため、治療後の違和感がほとんどありません。形や大きさ、色調を患者様ごとに調整することで、笑ったときに調和の取れた印象を作り出すことができます。見た目の改善は単なる美容的な変化ではなく、「もう一度笑えるようになった」という前向きな心理的変化をもたらす治療でもあります。
専門医に相談することで分かる最適な選択肢
前歯の欠けや歪みといっても、その原因や範囲は人それぞれ異なります。小さな欠けであれば部分的なセラミック修復(ラミネートベニアなど)で十分対応できる場合もありますが、噛み合わせや歯列のバランスが関係しているケースでは、矯正や全体的な咬合調整が必要となることもあります。そのため、見た目だけで判断せず、歯科医師による詳細な診査・診断を受けることが重要です。専門医は、歯の形態、咬合圧、歯肉ライン、顔全体との調和を含めた総合的な視点から、最適な治療法を提案します。とくに審美歯科分野では、技工士との連携やデジタル設計によって、より高精度で自然な仕上がりを追求することが可能です。患者様の希望を丁寧にヒアリングし、ライフスタイルや将来のメンテナンス性を考慮した治療計画を立てることで、満足度の高い結果を得られます。
自然な笑顔を長く保つためにできる日常ケア
治療後の美しい前歯を長く維持するためには、日常のケアが欠かせません。セラミックは変色や摩耗に強い素材ですが、天然歯や歯ぐきの健康状態が悪化すると、見た目にも影響が出てしまいます。まず大切なのは、正しいブラッシング習慣です。毛先の柔らかい歯ブラシで歯と歯ぐきの境目を優しく磨き、歯間ブラシやデンタルフロスで汚れを残さないことが基本です。さらに、半年〜1年ごとの定期検診で噛み合わせやセラミックの接着状態を確認することも重要です。夜間の歯ぎしりがある方は、ナイトガードの使用によって破損リスクを減らせます。加えて、硬いものを前歯で噛む習慣を避けたり、コーヒー・紅茶などの着色成分を摂取した後は軽くうがいをするなど、ちょっとした意識が美しい笑顔を長く保つ秘訣になります。
監修:関口デンタルオフィス
電話番号:048-652-1182
*監修者
関口デンタルオフィス
*経歴
・2008年 日本大学歯学部卒業
日本大学歯学部臨床研修部入局
・2009年 日本大学歯学部補綴学第一講座入局
専修医
顎関節症科兼任
・2014年 同医局退局
関口デンタルオフィス開院
*所属学会
*スタディークラブ
・CIDアクティブメンバー(Center of Implant Dentistry)






