歯の根の先に「膿の袋」?放置すると骨まで溶かす危険な病気とは
- 2025年12月15日
- インプラント
目次
1.歯の根の先に「膿の袋がある」と言われて不安な方へ
「膿の袋」と聞いて戸惑うのは自然なこと
歯科医院で「歯の根の先に膿の袋があります」と説明されると、多くの方が強い不安や戸惑いを感じます。
聞き慣れない言葉であるうえに、「膿」「袋」「骨が溶けるかもしれない」といった表現から、深刻な病気なのではと心配になるのは自然な反応です。
この「膿の袋」は、医学的には根尖病変と呼ばれ、歯の根の先で起こる慢性的な炎症を指します。
突然できたものではなく、時間をかけて少しずつ形成されることが多いため、「なぜ今まで気づかなかったのか」と疑問を持たれる方も少なくありません。
まず大切なのは、「膿の袋がある=すぐに大変な状態」というわけではない、という点を知ることです。
正しい知識を得ることで、不安は整理しやすくなります。
痛みがなくても問題が進んでいるケース
根尖病変の特徴の一つが、「痛みがないことが多い」という点です。
そのため、「痛くないのに治療が必要なの?」と疑問に思われる方もいらっしゃいます。
歯の神経がすでに死んでいる場合、炎症が起きていても痛みを感じにくくなります。
しかし、内部では細菌感染が続き、歯の根の先の骨が少しずつ溶けているケースもあります。
これが、レントゲンやCTで「黒い影」「膿の袋」として見つかる理由です。
症状がないからといって問題が止まっているとは限らず、
体調の変化や免疫力の低下をきっかけに、突然腫れや痛みが出ることもあります。
痛みの有無だけで判断できない点が、根尖病変の分かりにくさでもあります。
放置してよいのか迷っている方の共通点
「今は痛くないし、忙しいから様子を見てもいいのでは」
そう考えて受診を迷っている方には、いくつか共通した心理があります。
一つは、「治療が大変そう」「根管治療は時間がかかると聞いた」という不安です。
また、「すぐに抜歯になるのでは」「治らない病気なのでは」と、最悪のケースを想像してしまう方も少なくありません。
しかし、根尖病変は状態によって治療の選択肢が異なり、
早い段階であれば根管治療によって改善が期待できるケースも多くあります。
放置することで、結果的に治療の選択肢が限られてしまう可能性がある点は、知っておくべき重要なポイントです。
迷っている段階でも構いません。
まずは専門の歯科医師に相談し、「今の状態」を正確に知ることが、不安を減らす第一歩になります。
2.「膿の袋」の正体とは何か
根尖病変とはどのような状態か
歯の根の先にできる「膿の袋」は、医学的には根尖病変と呼ばれます。
これは、歯の内部(根管)に入り込んだ細菌が原因で、根の先の組織に慢性的な炎症が起きている状態を指します。
多くの場合、むし歯が進行して神経が死んでしまった歯や、過去に根管治療を受けた歯で起こります。
神経が機能していないため、炎症があっても強い痛みを感じにくく、気づかないまま経過することも少なくありません。
炎症が続くと、体は細菌の広がりを抑えようとして防御反応を起こし、その結果として膿がたまり、袋状の病変が形成されます。
根尖病変は「突然できる病気」ではなく、時間をかけて静かに進行することが多い点が特徴です。
なぜ歯の根の先に膿がたまるのか
膿が歯の根の先にたまる最大の原因は、根管内に残った細菌感染です。
むし歯が深く進行した場合や、過去の根管治療で細菌が完全に取り切れなかった場合、細菌は歯の根の先まで到達します。
歯の根の先は、顎の骨と接している部分です。
ここに細菌が出てくると、体は炎症反応を起こし、白血球などが集まって細菌と戦います。
その結果として生じるのが「膿」であり、周囲の骨は炎症の影響で少しずつ吸収され、骨が溶けるように見える状態になります。
この反応は体を守るための仕組みでもありますが、感染源が残ったままだと炎症は治まりません。
そのため、根尖病変では原因となる細菌を取り除く治療、つまり根管治療が重要になります。
レントゲンやCTで分かること・分からないこと
根尖病変は、見た目だけでは判断できないため、画像検査が重要になります。
一般的なレントゲンでは、歯の根の先に「黒い影」として病変が映り、骨が溶けている可能性を確認できます。
一方、CT検査では、三次元的に骨や根の形を把握できるため、
病変の大きさや位置、周囲の骨への広がり、根の形の複雑さなどをより詳しく評価できます。
ただし、画像検査だけですべてが分かるわけではありません。
レントゲンやCTは「骨の変化」を捉えるものであり、細菌の種類や活動性までは直接分かりません。
また、初期の根尖病変では、画像に明確に写らないこともあります。
そのため、画像所見に加えて、症状の有無や過去の治療歴を総合的に判断することが大切です。
疑問がある場合は、検査結果について丁寧な説明を受けることで、不安を整理しやすくなります。
3.膿の袋と「骨が溶ける」現象の関係
炎症が骨に影響を与える仕組み
歯の根の先にできる膿の袋(根尖病変)は、細菌感染による慢性的な炎症反応の結果として形成されます。
根管内に残った細菌やその毒素が根の先から外へ出ると、周囲の組織は「異物が侵入した」と認識し、免疫反応を起こします。
この過程で炎症性物質が放出され、歯の根を取り囲む顎の骨では、骨を壊す働きを持つ細胞(破骨細胞)が活性化します。
その結果、骨の再生と吸収のバランスが崩れ、レントゲンでは黒く抜けた影として映る、いわゆる「骨が溶ける」状態が生じます。
これは骨が突然崩壊するような現象ではなく、感染が続く限り少しずつ進行する慢性的な変化です。
原因となる細菌が除去されない限り、体は防御反応を続けるため、骨への影響も長期化します。
そのため、根尖病変では表面的な症状の有無ではなく、
炎症の原因そのものを断つための根管治療が重要な治療選択肢として考えられます。
自覚症状が出にくい理由
根尖病変が進行していても、自覚症状がほとんど現れないケースは珍しくありません。
その大きな理由は、多くの場合、問題となっている歯の神経がすでに機能していないためです。
歯の神経は痛みを感じ取る役割を担っていますが、むし歯の進行や過去の治療によって神経が死んでいると、
炎症が起きていても「痛い」という感覚が脳に伝わりにくくなります。
そのため、根の先で膿の袋が大きくなり、骨が溶けるような変化が起きていても、気づかずに過ごしてしまうことがあります。
また、炎症が急激ではなく、ゆっくり進行する場合、体が一時的に炎症を抑え込もうとするため、
腫れや痛みといった分かりやすい症状が表に出ないこともあります。
このように、根尖病変は「症状がない=問題がない」とは言い切れない病気です。
画像検査で初めて発見されるケースが多いのも、この病気の特徴の一つです。
一時的に治ったように感じるケースの注意点
根尖病変がある方の中には、「以前は腫れていたけれど、いつの間にか引いた」「痛みがなくなった」と感じた経験を持つ方もいます。
こうした場合、一見すると自然に治ったように思えるかもしれません。
しかし、多くの場合これは病気が治癒したわけではなく、
膿が一時的に排出されたり、炎症が一時的に落ち着いたりして、症状だけが軽減している状態です。
原因となる細菌が根の中に残っている限り、根尖病変そのものは存在し続けます。
この状態で放置すると、症状が出ない期間が続いた後、
体調不良や免疫力の低下をきっかけに、再び強い腫れや痛みが現れることもあります。
また、その間に骨が溶ける範囲が徐々に広がっているケースもあります。
「治った気がする」という感覚だけで判断してしまうと、
結果的に治療のタイミングを逃し、選択肢が限られてしまう可能性があります。
一時的な変化に安心しすぎず、専門的な評価を受けることが重要です。
4.根尖病変が起こる主な原因
むし歯が神経まで達した場合
むし歯が進行し、歯の内部にある神経(歯髄)まで細菌感染が及ぶと、根尖病変が起こる大きな原因となります。
初期のむし歯では痛みやしみる症状が出やすいものの、感染が深くなるにつれて神経が炎症を起こし、やがて壊死(機能を失った状態)に至ることがあります。
神経が壊死すると、痛みが一時的に治まることが多く、「自然に治った」と感じる方も少なくありません。
しかし実際には、神経の中で増殖した細菌やその毒素が、歯の根の先へと広がり、
体の防御反応として**膿の袋(根尖病変)**が形成されていきます。
この炎症が慢性化すると、周囲の骨では吸収が進み、
レントゲンでは「根の先が黒く抜けて見える」、いわゆる骨が溶ける状態として確認されます。
痛みの有無に関係なく進行する点が、根尖病変の怖さとも言えます。
むし歯を放置した結果として根尖病変が生じるケースは非常に多く、
「今は困っていないから」と治療を先延ばしにした歯ほど、後に問題が表面化しやすい傾向があります。
過去の根管治療が関係しているケース
すでに根管治療を受けた歯であっても、根尖病変が再発・残存するケースは決して珍しくありません。
根管は非常に細く複雑な形をしており、枝分かれしている場合も多いため、
治療時に細菌や汚染物質を完全に除去することが難しい場合があります。
また、治療直後は問題がなくても、
時間の経過とともに被せ物や詰め物の劣化・隙間から細菌が侵入し、
再び根の中で感染が広がることもあります。
このような場合、痛みがほとんど出ないまま、膿の袋だけが徐々に大きくなることもあります。
患者さんの中には「もう神経を取った歯だから大丈夫」と思われる方も多いですが、
過去に根管治療を行った歯ほど、定期的なレントゲンチェックが重要です。
再発が疑われる場合には、再根管治療や、状態に応じた追加の対応が検討されます。
ヒビや外傷が原因になることもある
明らかなむし歯が見当たらないにもかかわらず根尖病変が見つかる場合、
歯に生じた細かなヒビ(クラック)や、過去の外傷が原因となっていることがあります。
転倒や事故、スポーツ中の衝撃などによって歯を強く打つと、
外見上は問題がなくても、内部の神経や血流がダメージを受けていることがあります。
その結果、数か月から数年かけて神経が弱り、感染が起こり、根の先に膿の袋が形成されることがあります。
また、歯ぎしりや強い噛みしめによって生じる微細なヒビから、
細菌がゆっくり侵入するケースもあります。
こうした原因は自覚しにくく、症状が出にくいため、発見が遅れやすい点が特徴です。
原因が特定しにくい根尖病変ほど、
レントゲンやCTなどの画像診断と、専門的な判断が重要になります。
違和感が続く場合や説明がつかない所見がある場合は、早めに相談することが大切です。
5.治療すれば治る可能性はあるのか
根管治療で改善が期待できるケース
歯の根の先に膿の袋(根尖病変)が見つかった場合でも、適切な根管治療によって改善が期待できるケースは少なくありません。
根尖病変の主な原因は、根管内に残った細菌や感染物質です。そのため、根の中を丁寧に清掃・消毒し、細菌の再侵入を防ぐ処置が行われれば、炎症は徐々に落ち着いていきます。
治療後すぐに骨が元通りになるわけではありませんが、時間の経過とともに体の治癒力が働き、
レントゲン上で「骨が溶けていた部分」が少しずつ回復していくことがあります。
特に、病変が比較的小さい場合や、感染期間が長くない場合には、保存的な根管治療で経過が良好となる可能性があります。
症状がない場合でも、画像診断で根尖病変が確認された際には、
早めに根管治療を行うことで、歯を残せる可能性が高まります。
再根管治療が検討される場合
すでに根管治療を受けた歯に膿の袋が残っている、あるいは再発している場合には、再根管治療が検討されることがあります。
これは、過去の治療で取り切れなかった細菌や、後から侵入した感染源を改めて除去することを目的とした治療です。
再根管治療では、被せ物や土台を外し、再度根の中を清掃・消毒します。
根管の形状が複雑であるほど難易度は高くなりますが、原因が明確な場合には改善が期待できることもあります。
ただし、根の先にできた病変が大きい場合や、根の状態によっては治癒に時間がかかることもあります。
そのため、再根管治療が適しているかどうかは、レントゲンやCTなどの画像をもとに慎重に判断されます。
外科的処置や抜歯が選択肢になる条件
根管治療や再根管治療を行っても改善が難しい場合には、外科的処置や抜歯が選択肢として検討されることがあります。
代表的な外科的処置には、歯ぐきを開いて根の先の病変を直接取り除く方法があります。
この治療は、根管治療だけでは感染源を十分に除去できない場合や、
根の先に限局した病変が残っている場合に選択されることがあります。
歯を保存できる可能性がある一方で、適応には条件があり、すべてのケースに行えるわけではありません。
また、歯のヒビが深く入っている場合や、骨の吸収が大きく進んでいる場合には、
残念ながら抜歯が現実的な選択となることもあります。
どの治療が適しているかは、歯の状態を正確に評価したうえで、丁寧に検討されます。
6.根管治療とはどのような治療か
根管治療の基本的な流れ
根管治療とは、歯の内部にある細い管(根管)の中から、細菌や感染した組織を取り除き、再感染を防ぐための治療です。
根尖病変や膿の袋ができる原因は、多くの場合、この根管内に細菌が残っていることにあります。
治療ではまず、歯の被せ物や詰め物を外し、根管への入口を確保します。
その後、専用の器具を用いて、根の中に残った感染物質や壊死した神経を丁寧に除去し、洗浄・消毒を繰り返します。
根管は非常に細く複雑な構造をしているため、時間をかけて清潔な状態に近づけていきます。
十分に消毒が行われた後、根管内に隙間ができないよう薬剤を詰め、細菌が再び入り込まないよう密閉します。
この一連の処置によって、炎症の原因を断ち、根の先にある病変の改善を目指します。
治療期間や回数の目安
根管治療は、1回で完了する治療ではなく、複数回に分けて行われることが一般的です。
感染の程度や歯の根の本数、過去の治療歴などによって差はありますが、
通常は数回から数週間〜数か月程度の通院が必要になることがあります。
膿の袋が小さく、感染が比較的軽度な場合には、治療回数が少なく済むこともあります。
一方で、根尖病変が大きい場合や、再根管治療が必要なケースでは、
根管内を清潔に保つために、治療期間が長くなる傾向があります。
治療後すぐに骨が元の状態に戻るわけではなく、
レントゲン上で「骨が溶ける」ように見えていた部分が回復してくるまでには、
数か月から年単位の経過観察が必要となることもあります。
痛みや違和感に対する一般的な配慮
根管治療と聞くと、「強い痛みがあるのでは」と不安に感じる方も多いかもしれません。
しかし実際には、治療中は局所麻酔を使用するため、処置そのものによる痛みは抑えられるよう配慮されています。
治療後に、噛んだときの違和感や軽い痛みを感じることはありますが、
これは炎症が落ち着いていく過程で起こる一時的な反応である場合が多いです。
多くの場合、時間の経過とともに徐々に軽減していきます。
不安や痛みが強い場合には、治療の進め方やペースを調整することも可能です。
我慢せずに症状を伝えることで、無理のない形で治療が進められるよう配慮されます。
根管治療は、痛みを与えるための治療ではなく、歯を残すための重要な工程であることを理解しておくことが大切です。
7.「すぐ治療が必要?」と迷ったときの考え方
経過観察が選択されるケース
歯の根の先に膿の袋(根尖病変)が見つかった場合でも、すべてのケースで直ちに治療が必要になるとは限りません。
病変が非常に小さく、痛みや腫れといった自覚症状がなく、過去のレントゲンと比較して変化が見られない場合には、一定期間の経過観察が選択されることもあります。
経過観察とは「何もしない」という意味ではなく、定期的にレントゲンやCTで状態を確認し、
根の先や骨が溶ける範囲に変化がないかを慎重に見ていく対応です。
体の免疫反応によって炎症が落ち着き、膿の袋が拡大せずに安定しているケースも存在します。
ただし、経過観察が可能かどうかは、歯の状態や原因、全身状態などを踏まえた専門的な判断が必要です。
自己判断で放置するのではなく、「今は治療を急がなくてもよい状態か」を歯科医師と共有することが大切です。
症状の有無だけで判断できない理由
根尖病変の判断で注意したいのが、「痛みがないから大丈夫」とは言い切れない点です。
多くの場合、問題となっている歯はすでに神経が機能していないため、
炎症があっても痛みとして感じにくくなっています。
そのため、自覚症状がないまま膿の袋が徐々に大きくなり、
知らないうちに周囲の骨が溶ける範囲が広がっていることもあります。
症状が出たときには、すでに病変が進行しているケースも少なくありません。
根尖病変は、症状よりも画像所見や経過の変化が重要視される病気です。
「今痛くないか」ではなく、「今後悪化する可能性があるか」という視点で判断する必要があります。
そのため、症状の有無だけで治療の必要性を決めることは難しいとされています。
セカンドオピニオンを検討するタイミング
治療を勧められたものの不安が残る場合や、
「本当に今すぐ根管治療が必要なのか」「抜歯しか選択肢がないと言われた」と感じた場合には、
セカンドオピニオンを検討することも一つの選択です。
歯の根の先の病変は、画像の見え方や診断の基準によって、
治療方針に幅が出やすい分野でもあります。
別の歯科医師の意見を聞くことで、自分の状態をより客観的に理解できることがあります。
セカンドオピニオンは、現在の治療を否定するものではなく、
納得して治療を受けるための情報整理の機会と考えるとよいでしょう。
迷いや不安を抱えたまま治療を進めるよりも、十分に理解したうえで判断することが、
結果的に後悔の少ない選択につながります。
8.よくある疑問への整理された回答(FAQ)
膿の袋は自然に消えることがあるのか
歯の根の先にできた膿の袋(根尖病変)が、治療を行わずに完全に自然消失するケースは多くありません。
ただし、症状が一時的に軽くなったり、腫れや違和感が引いたように感じたりすることはあります。これは、体の免疫反応によって炎症が一時的に抑えられている状態と考えられます。
しかし、根尖病変の原因である細菌は、多くの場合、歯の根の中(根管内)に残ったままです。
原因が除去されていない限り、膿の袋自体が完全に消失することは難しく、
レントゲン上では大きさが変わらない、あるいは時間とともに再び拡大するケースもあります。
また、膿が歯ぐきの外に排出されることで症状が落ち着き、
「治ったように感じる」場合もありますが、これは病変が治癒した状態とは異なります。
自覚症状の有無だけで判断せず、画像検査をもとに状態を確認することが重要です。
抗生物質だけで治るのか
膿の袋が見つかった際、「抗生物質を飲めば治るのでは」と考える方も少なくありません。
抗生物質は、急性の腫れや痛みを抑える目的では有効な場合がありますが、
抗生物質だけで根尖病変を根本的に治すことは難しいとされています。
その理由の一つが、根管内の環境です。
歯の神経が死んでいる根管内は血流が乏しく、抗生物質が十分に届きにくい場所です。
そのため、原因となる細菌を完全に除去することができず、
薬の服用をやめると再び炎症が起こることもあります。
抗生物質は、あくまで補助的な役割であり、
根尖病変の根本治療としては、原因部位を直接清掃・消毒する根管治療が検討されます。
薬だけに頼る治療には限界があることを理解しておくことが大切です。
再発することはあるのか
根尖病変は、適切な治療を行った後であっても、再発する可能性がゼロではありません。
再発の原因として多いのは、根管内にわずかに細菌が残っていた場合や、
治療後に被せ物や詰め物の劣化によって細菌が再侵入したケースです。
また、歯の根の形が複雑で器具が届きにくい場合や、
歯にヒビが入っている場合などでは、治療後も炎症が再燃することがあります。
このような理由から、根管治療後であっても定期的なレントゲン検査による経過観察が重要です。
再発した場合でも、早期に発見できれば再根管治療などの選択肢が検討できることもあります。
治療後は「終わった」と考えるのではなく、
歯の状態を継続的に見守ることが、長期的な安定につながります。
9.放置した場合に考えられるリスク
骨がさらに溶ける可能性
歯の根の先にできた膿の袋(根尖病変)を放置した場合、最も注意すべきリスクの一つが、炎症によって骨がさらに溶けていく可能性です。
根尖病変は、根管内に残った細菌が原因となり、体の免疫反応によって慢性的な炎症が続く状態です。この炎症が長期間続くと、周囲の骨は「異物を排除しよう」とする反応の中で徐々に吸収されていきます。
骨の吸収は一気に進むわけではなく、時間をかけて少しずつ広がるため、痛みなどの自覚症状がほとんど出ないまま進行することも少なくありません。
そのため、「症状がないから大丈夫」と判断してしまい、気づいたときにはレントゲン上で病変が大きくなっているケースも見られます。
骨が溶ける範囲が広がるほど、歯を支える土台は弱くなり、将来的に歯の動揺や噛みにくさにつながる可能性も高まります。
早期に対処することが、骨のダメージを最小限に抑える重要なポイントです。
周囲の歯や全身への影響
根尖病変の影響は、問題となっている歯の周囲だけにとどまらない場合があります。
膿の袋が拡大すると、隣接する歯の周囲の骨にも炎症が及び、健康だった歯の支持骨まで影響を受けることがあります。その結果、周囲の歯がしみる、違和感が出るといった症状につながることもあります。
また、慢性的な炎症が続いている状態は、体にとって「感染源を抱えている」状況でもあります。
普段は症状が落ち着いていても、体調を崩したときや免疫力が低下したときに、急に腫れや強い痛みが出るケースもあります。
さらに、感染が急性化すると、頬や歯ぐきが大きく腫れたり、発熱を伴ったりすることもあり、日常生活に支障をきたす場合もあります。
根尖病変は局所的な問題でありながら、放置することで全身への影響も考慮すべき状態であることを理解しておく必要があります。
治療の選択肢が限られてしまう理由
根尖病変は、早い段階であれば根管治療によって改善が期待できるケースが多くあります。
しかし、放置期間が長くなり、骨の吸収が大きく進行してしまうと、選択できる治療法が限られてしまう可能性があります。
例えば、病変が小さい段階であれば、根管内の感染を取り除くことで骨の回復が見込めますが、
骨が大きく失われた状態では、治療後も歯の安定性が十分に得られないことがあります。
また、過去の根管治療の状態や歯根のヒビなどが重なっている場合には、再治療が難しくなることもあります。
その結果、外科的処置や抜歯といった選択肢を検討せざるを得ない状況になることもあります。
「今すぐ困っていないから」と先送りにすることで、将来的に選べる治療の幅が狭まってしまう点は、根尖病変の大きなリスクの一つです。
10.不安な状態でも「相談」から始めていい
今の状態を正しく知ることの重要性
歯の根の先に膿の袋がある、いわゆる根尖病変と聞くと、多くの方が「どれほど深刻なのか」「このまま放っておいて大丈夫なのか」と不安になります。しかし、実際の状態は見た目や症状の有無だけでは判断できません。
根尖病変は、痛みがないまま進行することもあれば、レントゲンやCTで初めて確認されることもあります。骨が溶ける範囲や炎症の活動性、過去の根管治療の状況などによって、対応の考え方は大きく変わります。
そのため、自己判断で「まだ大丈夫」「忙しいから後回し」と決めてしまう前に、まずは現在の状態を正確に把握することが重要です。正しい情報を得ることで、必要以上に不安を抱えずに済む場合も多く、次に取るべき行動が整理しやすくなります。
根尖病変は早めの相談で選択肢が広がる
根尖病変は、早い段階で相談することで、治療の選択肢が比較的広く保たれる傾向があります。
病変が小さく、骨の吸収が限られている場合には、根管治療によって改善が期待できるケースも多く、歯を残せる可能性が高まります。一方で、長期間放置され、膿の袋が大きくなってしまうと、再根管治療や外科的処置など、治療内容が複雑になることもあります。
「今すぐ治療を受けるかどうか」は、相談した時点で必ず決める必要はありません。
しかし、早めに歯科医師と情報を共有しておくことで、将来の選択肢を狭めずに済むという点は大きなメリットです。相談は、治療を急かされる場ではなく、選択肢を知るための機会と考えてよいでしょう。
専門の歯科医師に相談するという第一歩
根尖病変や膿の袋について悩んでいる方にとって、「相談する」という行為自体が大きな一歩に感じられることもあります。
しかし、歯科医師は治療だけでなく、患者さんが感じている不安や疑問も含めて診る専門家です。「よく分からない」「怖い」「今すぐ決められない」といった気持ちを伝えることは、決して特別なことではありません。
専門的な検査と説明を受けることで、今後どのような経過が考えられるのか、どのタイミングで何を検討すればよいのかが整理されていきます。
不安な状態のまま一人で悩み続けるよりも、まずは相談という形で状況を共有することが、納得のいく判断につながる第一歩となります。
埼玉県大宮の再治療0%を追求した
審美歯科セラミック治療ガイド
監修:関口デンタルオフィス大宮
電話番号:048-652-1182
*監修者
関口デンタルオフィス大宮
*経歴
・2008年 日本大学歯学部卒業
日本大学歯学部臨床研修部入局
・2009年 日本大学歯学部補綴学第一講座入局
専修医
顎関節症科兼任
・2014年 同医局退局
関口デンタルオフィス開院
*所属学会
*スタディークラブ
・CIDアクティブメンバー(Center of Implant Dentistry)






