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重度歯周病でも「インプラントしかない」と言われた方へ。歯を残す可能性を探る|さいたま市北区宮原の歯医者・歯科で審美インプラント治療|関口デンタルオフィス埼玉

重度歯周病でも「インプラントしかない」と言われた方へ。歯を残す可能性を探る

目次

 
 

「インプラントしかない」と言われたとき、多くの方が感じる不安

   

突然の抜歯宣告に戸惑い、受け入れられない気持ち

これまで大きな痛みもなく生活していた中で、診察の場で突然「この歯は抜いて、インプラントにしましょう」と告げられると、多くの方が強い戸惑いやショックを受けます。
歯は一度抜いてしまえば元に戻らないため、「本当に今すぐ抜く必要があるのか」「まだ何かできることがあるのではないか」と感じるのは、ごく自然な反応です。
特に重度歯周病と診断された場合、専門用語が多い説明の中で治療方針だけが先に提示されると、患者さんは状況を十分に理解できないまま決断を迫られたように感じてしまいます。
その結果、不安や不信感が強まり、「納得できない」という気持ちだけが残ってしまうことも少なくありません。
この段階で大切なのは、戸惑いを無理に抑え込まず、「なぜ抜歯が必要だと判断されたのか」を一つずつ整理していくことです。
歯の状態や治療選択の背景を理解することが、不安を落ち着かせる最初の一歩になります。

 

本当に歯を残す選択肢は残されていないのかという疑問

「インプラントしかない」と言われたとき、多くの方の頭に浮かぶのが、「歯を残す選択肢はもうないのだろうか」という疑問です。
重度歯周病は確かに進行した状態ですが、すべてのケースで即座に抜歯が唯一の治療選択になるわけではありません。
歯を残せるかどうかは、歯を支える骨の量、歯根の状態、炎症の広がり方、噛み合わせ、清掃状態など、複数の要素を総合的に評価して判断されます。
十分な検査や再評価が行われないまま治療方針が決まると、患者さん自身がその妥当性を判断することが難しくなります。
「抜歯回避の可能性はどの程度あるのか」「保存治療を行った場合の見通しはどうか」といった点を確認することは、決してわがままではありません。
歯を残すかどうかは人生に長く関わる問題だからこそ、一度立ち止まって確認する姿勢が重要です。

 

重度歯周病=即抜歯というイメージへの違和感

「重度歯周病と診断されたら、もう抜歯しかない」というイメージを持っている方は少なくありません。
しかし、重度という言葉は歯周病の進行度を示す医学的な分類であり、直ちに抜歯を意味するものではありません。
実際には、炎症をコントロールする歯周治療によって状態が安定するケースや、条件付きで歯を残す治療選択が検討される場合もあります。
一方で、無理に歯を残すことが、将来的に周囲の歯や全体の噛み合わせへ悪影響を及ぼすこともあるため、慎重な判断が必要です。
重要なのは、「残すか、抜くか」という単純な二択ではなく、その歯が長期的に機能し続ける可能性を冷静に見極めることです。
重度歯周病と診断されたからといって、すぐに諦める必要はありません。
まずは正確な情報を得て、自分の状態を理解することが、納得できる治療選択につながります。

 
 

重度歯周病とは何が起きている状態なのか

   

歯を支える骨や組織に起こる変化

重度歯周病とは、歯そのものではなく、歯を支えている周囲の組織が大きく損なわれている状態を指します。歯の周りには、歯ぐき(歯肉)、歯根膜、歯槽骨といった構造があり、これらが協力して歯を安定させています。歯周病が進行すると、歯ぐきの炎症が深部に及び、歯を支える歯槽骨が少しずつ吸収されていきます。
骨が失われると、歯はぐらつきやすくなり、噛む力を十分に支えられなくなります。さらに、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯ぐきの隙間が深くなり、細菌が溜まりやすい環境が作られます。この悪循環が続くことで、炎症は慢性化し、治療が難しい状態へと進んでいきます。
重度歯周病は「歯が悪くなった」というよりも、「歯を支える土台が弱くなっている状態」と理解すると、現在何が起きているのかを把握しやすくなります。

 

痛みや自覚症状が少ないまま進行する理由

歯周病が厄介な病気とされる理由の一つが、進行しても強い痛みが出にくい点です。初期から中等度の段階では、歯ぐきの腫れや出血といったサインがあっても、日常生活に大きな支障が出ることは多くありません。そのため、「少し出血するだけ」「年齢のせいだろう」と見過ごされやすくなります。
重度歯周病に進行しても、炎症が慢性的に続くことで体が慣れてしまい、強い痛みを感じにくくなることがあります。また、神経のある歯そのものが直接侵されていない場合、痛みとして認識されにくいのも特徴です。その結果、気づいたときには歯を支える骨が大きく失われているケースも少なくありません。
症状が軽く感じられても、内部では進行している可能性があることを知ることが、治療選択を考えるうえで重要になります。

 

なぜ「重度」と診断されるのか、その基準

歯周病が「重度」と診断されるかどうかは、見た目の印象だけで決まるものではありません。主に、歯周ポケットの深さ、歯槽骨の吸収量、歯の動揺度(ぐらつき)、炎症の広がり方など、複数の検査結果をもとに総合的に判断されます。一般的に、歯周ポケットが深く、歯を支える骨が半分以上失われている場合は、重度と評価されることが多くなります。
ただし、「重度」と診断されたからといって、すべての歯がすぐに抜歯対象になるわけではありません。歯ごとに状態は異なり、歯を残す治療が検討できる場合もあれば、将来的なリスクを考えて抜歯が選択される場合もあります。
重要なのは、診断名そのものに過度に不安を感じるのではなく、どの歯がどの程度の状態なのかを正しく理解することです。それが、インプラントや抜歯回避を含めた納得できる治療選択につながります。

 
 

なぜ「インプラントしかない」と判断されることがあるのか

   

歯周病が進行した歯に共通するリスク

重度歯周病まで進行した歯では、「歯そのもの」よりも、歯を支える土台が弱くなっていることが大きな問題になります。
歯槽骨(歯を支える骨)が失われると、噛む力を支えきれずに歯が揺れやすくなり、食事のたびに負担が集中します。揺れが続くと、歯周ポケットの中に細菌が入り込みやすくなり、炎症が慢性化していく悪循環が起こりやすくなります。
また、重度歯周病の歯は、見た目以上に“感染の温床”になっていることがあります。歯ぐきの中では出血や膿が出やすい状態が続き、口臭や腫れなどの症状として現れる場合もあります。
さらに、噛み合わせが乱れることで周囲の歯に負担がかかり、他の歯までトラブルが連鎖するリスクも無視できません。
こうした背景から、担当医が「まず感染源を取り除き、安定した噛み合わせを作る」という目的で抜歯とインプラントを治療選択として提示することがあります。
ただし、その妥当性は歯1本ごとの状態や生活背景によって変わるため、検査結果をもとに具体的に説明を受けることが重要です。

 

保存治療が難しいと判断される背景

歯を残す治療(抜歯回避)が検討できるかどうかは、「残したい気持ち」だけでは決められず、長期的に機能する見込みがあるかで判断されます。
保存治療が難しいとされる代表的な背景には、歯槽骨の吸収が大きいこと、歯の揺れが強いこと、歯周ポケットが深く清掃が行き届きにくいことなどがあります。
加えて、歯根の形や長さ、過去の治療歴も影響します。たとえば歯根にヒビ(歯根破折)が疑われる場合、歯周病の治療を重ねても改善が得られにくいことがあります。
また、根分岐部(奥歯の根が分かれる部分)に病変が及ぶと、器具が届きにくく、炎症のコントロールが難しくなりやすい点も理由の一つです。
さらに重要なのが、治療後の維持管理(歯みがき、定期的なメンテナンス)を含めて、改善を継続できるかという視点です。
重度歯周病は「治したら終わり」ではなく、安定した状態を保つことが治療の一部になります。ここが難しいと判断されると、再発リスクを考慮してインプラントが提案されることがあります。
ただし、保存治療の可否は一律ではありません。精密検査と再評価を踏まえた上で、どこまで歯を残す治療選択が可能かを確認することが大切です。

 

医師の説明が十分に伝わらないことで生じる誤解

「インプラントしかない」と言われたとき、実際には“他の選択肢が存在しない”のではなく、“長期的な安定を考えると最も現実的に見える”という意味で伝えられていることがあります。
しかし、診療時間が限られている場面では、検査結果の細かな説明や、保存治療のメリット・限界まで丁寧に共有するのが難しいこともあり、患者さん側には「もう抜くしかない」と強く響いてしまいがちです。
また、歯周病の用語(歯周ポケット、骨吸収、動揺度など)が難しく、説明を受けても内容が理解しきれないまま話が進んでしまうことがあります。
その結果、「なぜ抜歯なのか」「抜歯回避の余地はどこまであるのか」が見えないまま、治療選択だけが提示され、納得感が得られにくくなります。
ここで大切なのは、遠慮せずに質問することです。
「どの検査所見が決め手なのか」「歯を残す治療をした場合の見通しとリスクは何か」「将来的にインプラントへ移行する可能性はあるか」など、具体的に確認すると情報が整理しやすくなります。
説明が理解しづらいと感じた場合、セカンドオピニオンを検討するのも一つの方法です。複数の視点から現状を捉えることで、より納得できる選択につながります。

 
 

重度歯周病とインプラント治療の関係性

   

歯周病がインプラント治療に与える影響

重度歯周病の既往がある方は、インプラント治療を検討する際にいくつか注意点があります。
歯周病は「歯の周りの細菌感染」であり、治療せずに炎症が残ったままだと、お口の中全体が細菌の影響を受けやすい状態になっています。この環境でインプラントを入れると、インプラントの周囲にも炎症が起きることがあり、これを「インプラント周囲炎」と呼びます。進行すると、インプラントを支える骨が減ってしまう可能性があるため、歯周病の管理は非常に重要です。
また、重度歯周病では歯槽骨がすでに失われていることが多く、インプラントを支える骨の量が不足するケースもあります。その場合、骨の状態を精密に確認したうえで、治療計画を立てる必要があります。
つまり、「歯周病=インプラントができない」という意味ではありませんが、歯周病がある状態で安易に進めるのではなく、炎症のコントロールと清掃環境の整備、メンテナンス体制まで含めた治療選択が求められます。
インプラントを安全に長く使うためには、手術の技術だけでなく、歯周病を安定させる視点が欠かせません。

 

抜歯後すぐにインプラントを勧められる理由

抜歯が避けられないと判断された場合、「抜いたらすぐにインプラントを」と提案されることがあります。
その理由の一つは、歯を失うと周囲の骨が時間とともに痩せやすい点です。歯が担っていた刺激が減ることで、顎の骨の形が変化し、将来的にインプラントを入れるスペースや骨量が不足しやすくなることがあります。
また、歯がない期間が長いと、隣の歯が傾いたり、噛み合う歯が伸びてきたりして、噛み合わせ全体が乱れる場合があります。噛み合わせが崩れると、残っている歯にも負担がかかりやすくなり、結果的に別の歯のトラブルにつながることもあります。
こうした連鎖を避ける目的で、早期の補綴(失った歯を補う治療)としてインプラントが候補に上がりやすいのです。
ただし、抜歯直後にインプラントを行うかどうかは、感染の有無、骨の状態、全身状態などによって変わります。
「すぐ」と言われたときほど、なぜそのタイミングが提案されているのか、他の選択肢(ブリッジ・入れ歯など)も含めて比較し、納得して決めることが大切です。

 

インプラントが万能ではない理由と注意点

インプラントは、失った歯の機能を補う有力な治療選択の一つですが、どんな状況にも適する万能な方法ではありません。
手術を伴うため、全身疾患の管理状況や服薬内容によっては慎重な判断が必要です。また、インプラントは虫歯にはなりませんが、周囲の歯ぐきが炎症を起こすことはあり、歯周病の管理が不十分だとインプラント周囲炎のリスクが高まります。
さらに、噛み合わせの力が強い方、歯ぎしり・食いしばりがある方では、上部構造(被せ物)や周辺への負担が増えやすく、マウスピースなどの対策が検討されることもあります。
そして何より重要なのが、治療後のメンテナンスです。定期的なクリーニングやセルフケアが続かないと、天然歯だけでなくインプラントの状態も不安定になりやすい点は知っておくべきポイントです。
「インプラントか、抜歯回避か」と悩んでいる段階では、まずは現状の歯周病をどこまで安定させられるのか、歯を残す治療選択が現実的か、そしてインプラントに移行する場合の条件は何かを整理することが、後悔の少ない判断につながります。

 
 

「歯を残す」ために検討される治療選択とは

   

歯周基本治療と精密な再評価の重要性

重度歯周病であっても、すぐに抜歯やインプラントへ進む前に検討されるのが「歯周基本治療」です。これは、歯石や細菌の塊を取り除き、炎症を抑えることを目的とした治療で、歯周病治療の土台となる工程です。歯の表面だけでなく、歯周ポケット内の汚れを丁寧に除去することで、歯ぐきの腫れや出血が落ち着くことがあります。
重要なのは、この基本治療を行ったあとに「精密な再評価」を行う点です。治療前の状態だけで歯を残せるかどうかを判断するのではなく、炎症が落ち着いた後の歯ぐきや骨の反応を確認することで、見え方が変わるケースもあります。歯の揺れが軽減したり、清掃環境が改善することで、保存治療の可能性が見えてくることもあります。
この再評価を経ずに治療選択を急ぐと、本来検討できたはずの抜歯回避の選択肢を見逃してしまうことがあります。歯を残す治療を考えるうえで、歯周基本治療と再評価は欠かせないステップです。

 

外科的歯周治療や再生療法の位置づけ

歯周基本治療だけでは十分な改善が得られない場合、外科的歯周治療が検討されることがあります。これは、歯ぐきを一時的に開いて、深い歯周ポケットの中を直接確認し、取り残された汚れや感染組織を除去する治療です。視野を確保することで、非外科的な処置では届かなかった部分まで清掃できる点が特徴です。
さらに条件が整えば、歯周組織再生療法が選択肢に入る場合もあります。これは、失われた歯槽骨や歯周組織の回復を促す治療で、すべての症例に適応できるわけではありませんが、歯を残す可能性を広げる手段の一つとされています。骨の欠損形態や炎症のコントロール状況、全身状態などを慎重に評価したうえで判断されます。
これらの治療は、インプラントの代替という位置づけではなく、「歯を残す可能性が現実的かどうかを見極めるための選択肢」です。リスクや限界を理解したうえで検討することが重要です。

 

保存を目指すか抜歯を選ぶかの判断軸

歯を残す治療を進めるか、抜歯を選択するかの判断は、「残せるかどうか」だけでなく、「残した歯がどのくらい機能し続けるか」という視点で考える必要があります。一時的に症状が落ち着いても、再発を繰り返しやすい状態であれば、長期的には負担が大きくなることもあります。
判断の軸となるのは、歯槽骨の残存量、歯の揺れ、噛み合わせの力、セルフケアのしやすさ、そして継続的な通院が可能かどうかといった点です。これらを総合的に見たうえで、「保存治療に取り組む価値があるか」「将来的にインプラントへ移行する可能性をどう考えるか」を整理していきます。
歯を残すこと自体が目的になってしまうと、結果的に他の歯やお口全体の健康を損ねることもあります。だからこそ、歯科医師と十分に話し合い、自分の生活や価値観に合った治療選択を行うことが、後悔の少ない判断につながります。

 
 

抜歯回避が検討できるケースと条件

   

歯を支える骨や歯根がどの程度残っているか

抜歯回避が検討できるかどうかを判断するうえで、最も重要な要素の一つが、歯を支える骨(歯槽骨)と歯根の残存状況です。重度歯周病では歯槽骨が大きく失われていることが多いものの、骨の吸収が部分的であったり、歯根の長さや形が比較的良好に保たれている場合には、歯を残す治療選択が現実的になることがあります。
評価の際には、レントゲンや歯周検査を用いて、骨がどの位置まで残っているか、歯根が骨にどの程度支えられているかを確認します。特に、歯根の周囲に骨が一定量残っている場合や、炎症を抑えることで安定が期待できる状態であれば、保存治療を検討する余地があります。
一方で、歯根が短い、ヒビが入っている、骨の吸収が歯根の先端近くまで及んでいる場合は、歯を残しても長期的な安定が難しいことがあります。
重要なのは、「重度歯周病だから無理」と一括りにするのではなく、その歯がどの程度支えられているかを歯ごとに評価することです。

 

噛み合わせや生活習慣が与える影響

歯を残すかどうかの判断では、歯や骨の状態だけでなく、噛み合わせや生活習慣も大きく関わってきます。噛む力が特定の歯に集中している場合、歯周病で弱った歯には過剰な負担がかかり、保存治療を行っても再び悪化する可能性があります。歯ぎしりや食いしばりの癖がある方では、この影響がより顕著になることもあります。
また、喫煙習慣は歯周病の進行や治癒を妨げる要因として知られており、抜歯回避を目指す治療では不利に働くことがあります。糖尿病などの全身疾患も、炎症のコントロールに影響を及ぼすため、歯科治療と並行した管理が重要です。
さらに、日常の歯みがき習慣やセルフケアの質も、治療結果を左右します。歯周病は細菌が原因となる病気であるため、治療後に清掃状態を維持できなければ、再発のリスクが高まります。
噛み合わせや生活習慣を含めて調整・改善できるかどうかが、歯を残す治療選択の可否に大きく影響します。

 

治療への理解と継続的な通院が重要な理由

抜歯回避を目指す治療は、一度の処置で完結するものではなく、段階的に状態を改善し、維持していくプロセスです。そのため、治療内容や目的を十分に理解し、継続的に通院できるかどうかが非常に重要な条件になります。
重度歯周病の治療では、歯周基本治療、再評価、必要に応じた外科的治療、その後のメンテナンスといった流れを経ることが一般的です。この過程で通院が途切れたり、セルフケアが不十分な状態が続くと、せっかく改善した状態が元に戻ってしまうこともあります。
また、歯を残す治療には限界があることを理解しておくことも大切です。保存治療を行った結果、将来的にインプラントへ移行する可能性がある場合もありますが、それは「治療が失敗した」という意味ではなく、その時点で最適な治療選択が変わったという捉え方が必要です。
歯科医師と十分に話し合い、治療の見通しやリスクを理解したうえで継続的に取り組めるかどうかが、抜歯回避を検討できるかどうかの大きな分かれ目になります。

 
 

「残せる可能性がある歯」と「難しい歯」の違い

   

精密検査によって見極められるポイント

歯を残せるかどうかの判断は、見た目や自覚症状だけでは行えません。重度歯周病では、精密検査によって得られる客観的な情報が重要な判断材料になります。具体的には、レントゲンや歯周検査で確認する歯槽骨の残存量、歯周ポケットの深さ、歯の動揺度(ぐらつき)、歯根の形態や長さなどが挙げられます。これらを総合的に評価し、歯がどの程度安定して機能できるかを見極めます。
たとえば、骨の吸収があっても一部に支えが残っている場合や、炎症を抑えることで動揺が軽減する見込みがある歯では、保存治療を検討できる可能性があります。一方で、歯根にヒビがある、骨の吸収が歯根の先端近くまで進んでいるなどの場合は、治療を重ねても長期的な安定が難しいと判断されることがあります。
精密検査は「歯を残すか、抜歯するか」を即断するためのものではなく、現実的な治療選択を考えるための基盤です。検査結果を丁寧に説明してもらい、納得したうえで判断することが重要です。

 

一時的に症状が落ち着いている場合の注意点

歯周病治療を行ったあとや、体調の変化によって、一時的に歯ぐきの腫れや出血が落ち着くことがあります。その結果、「この歯はもう大丈夫」「まだ十分に使える」と感じる方も少なくありません。しかし、症状が落ち着いている状態が、必ずしも歯の土台が回復したことを意味するわけではない点には注意が必要です。
重度歯周病では、炎症が抑えられても、失われた歯槽骨が自然に元へ戻ることは基本的にありません。見た目や自覚症状が改善しても、噛む力がかかることで再び悪化するリスクが残っている場合もあります。特に、噛み合わせの負担が大きい歯や、清掃が難しい部位では、再発が起こりやすくなります。
一時的な改善だけを根拠に保存を続けると、結果的に治療のタイミングを逃してしまうこともあります。症状の有無だけで判断せず、定期的な検査と再評価を通じて、長期的に歯を残せるかどうかを見極める姿勢が大切です。

 

無理に残すことが将来の負担になるケース

「できる限り歯を残したい」という気持ちは、多くの患者さんに共通するものです。しかし、無理に歯を残すことが、将来的にお口全体の負担になるケースもあります。たとえば、重度歯周病で大きく揺れている歯を残し続けると、噛み合わせが不安定になり、周囲の健康な歯に過剰な力がかかることがあります。
また、慢性的な炎症が続く歯を残すことで、口腔内の細菌環境が悪化し、他の歯やインプラント治療予定部位に影響を及ぼす可能性もあります。このような場合、抜歯を選択することが、結果的に残っている歯を守る治療選択となることもあります。
重要なのは、「残すこと」自体を目的にしないことです。その歯を残すことで、日常生活に支障なく噛める状態が維持できるのか、将来的な治療の選択肢を狭めてしまわないかを考える必要があります。歯科医師と十分に話し合い、短期的な感情だけでなく、長期的な視点で判断することが、後悔の少ない治療選択につながります。

 
 

後悔しないための歯科医院・歯科医師の選び方

   

重度歯周病の診断・治療経験をどう見極めるか

重度歯周病の治療選択では、「歯を残す」可能性の評価と、「抜歯・インプラント」へ進む判断のどちらにも、精密な診断力が求められます。
そのため医院選びでは、まず検査と説明の丁寧さを確認することが大切です。歯周ポケット検査(深さや出血の有無)、レントゲン、必要に応じてCTなど、複数の情報をもとに状態を把握しようとしているかは一つの目安になります。
また、治療計画が「いきなり結論」ではなく、歯周基本治療→再評価→追加治療(外科的処置や再生療法の検討)→メンテナンス、といった流れで組み立てられているかも確認ポイントです。
重度歯周病は、炎症のコントロールと維持管理が治療の柱になるため、短期間で完結する話ではありません。継続的な管理を前提にしているかどうかは、治療結果にも関わります。
さらに、医院の「専門性」を判断する際は、肩書きや宣伝文句よりも、診断根拠と治療の考え方が一貫しているかに注目してください。
歯を残す・抜歯回避・インプラントという治療選択を、患者さんの状態に合わせて整理し、メリットだけでなく限界やリスクも説明できるかが重要です。

 

抜歯・保存それぞれの説明が丁寧かどうか

納得できる治療選択のためには、「なぜ抜歯なのか」「なぜ保存が難しいのか(あるいは可能なのか)」が具体的に説明されることが欠かせません。
たとえば抜歯が提案される場合でも、骨の吸収の程度、歯の揺れ、感染の範囲、歯根の状態など、どの所見が判断の決め手になっているのかを言葉と資料で示してもらえると理解しやすくなります。
一方、歯を残す方向で進める場合も、「残せる見込み」と同時に、「どの条件が満たせなければ将来的に抜歯へ移行する可能性があるのか」まで説明されることが望ましいです。
保存治療は希望が持てる一方で、再発や限界があることも事実です。だからこそ、良い面だけではなく、現実的な見通しが共有されるほど、後悔は減ります。
説明が丁寧かどうかは、質問に対する反応にも表れます。
「歯を残す方法はありますか」「抜歯回避が難しい理由は何ですか」「インプラント以外の選択肢はありますか」といった問いに、急がせず、選択肢を整理して答えてくれるかを確認すると良いでしょう。

 

セカンドオピニオンを検討する意義

重度歯周病で「インプラントしかない」と言われたとき、セカンドオピニオンを検討することは、治療に迷っている方にとって大切な選択肢の一つです。
目的は「どちらが正しいか」を決めることではなく、別の視点から現状の評価と治療選択の整理を受け、納得して決断するための情報を増やすことにあります。
歯を残す治療は、医院の方針や得意分野、診断の進め方によって提案内容が変わることがあります。
同じ検査結果でも、保存治療を段階的に試みる考え方もあれば、将来の安定性を重視して早期に抜歯・インプラントを提案する考え方もあります。複数の説明を聞くことで、「自分が重視したいこと(歯を残すこと、治療期間、再発リスク、費用、通院の継続性など)」が明確になりやすくなります。
セカンドオピニオンを受ける際は、現在の検査資料(レントゲン、歯周検査結果、治療経過など)があると話が具体的になります。
焦って決めるほど不安は増えやすいものです。情報を整理し、納得できる治療選択につなげるために、検討する価値のある方法です。

 
 

よくある疑問と不安への整理(FAQ)

   

歯を残す治療は時間や費用がかかるのか

歯を残す治療、特に重度歯周病の保存治療では、一定の時間と通院が必要になることが少なくありません。歯周基本治療、再評価、必要に応じた外科的処置、そしてメンテナンスと、段階的に進めていくため、短期間で完結する治療ではないのが実情です。そのため、「すぐに結果を出したい」「通院回数を最小限にしたい」という方には負担に感じられることもあります。
費用についても、検査や処置内容によって差が生じます。保険診療で対応できる範囲もありますが、症例によっては自費診療が検討される場合もあります。ただし、歯を残す治療は「今ある歯をどこまで活かせるか」を見極めるための投資ともいえます。将来的にインプラントなどの治療選択が必要になった場合でも、歯周病が安定していることは大きな利点になります。
時間や費用だけで判断するのではなく、治療の目的や見通しを理解したうえで、自分に合った治療選択を考えることが大切です。

 

保存治療がうまくいかなかった場合の対応

歯を残す治療に取り組んだ結果、思うような改善が得られないケースもあります。その場合、「治療が失敗した」と感じてしまう方もいますが、必ずしもそうとは限りません。重度歯周病では、実際に治療を進めてみて初めて、歯の反応や限界が明らかになることもあります。
保存治療がうまくいかなかった場合は、現時点の状態を再評価し、今後の治療方針を改めて検討します。炎症の再発や歯の動揺が進行している場合には、抜歯を含めた治療選択が現実的になることもありますが、それは「無駄な治療だった」という意味ではありません。歯を残せるかどうかを見極めた結果として、より安定した選択へ移行する判断と捉えることができます。
大切なのは、状況の変化に応じて柔軟に治療方針を見直し、その都度納得したうえで進めることです。

 

将来的にインプラントへ移行する可能性

歯を残す治療を選択した場合でも、将来的にインプラントへ移行する可能性がゼロになるわけではありません。重度歯周病は慢性疾患であり、長期的な管理が欠かせないため、年齢や全身状態、噛み合わせの変化などによって、治療選択が変わることもあります。
ただし、歯周病をコントロールしながら歯を残す期間があったことは、決して無意味ではありません。歯を支える骨や歯ぐきの状態を安定させておくことで、将来インプラント治療を検討する際にも、より良い条件で進められる可能性があります。抜歯回避を目指した治療は、「インプラントを先延ばしにする」だけでなく、「将来の選択肢を整える」意味合いも持っています。
治療選択は一度決めたら終わりではありません。その時点の状態に応じて、歯を残すか、インプラントへ移行するかを考えていくことが、現実的で後悔の少ない向き合い方といえます。

 
 

「まずは相談する」という選択が未来を広げる

   

現状を正しく知ることが治療選択の第一歩

重度歯周病と診断され、「インプラントしかない」と言われたとき、多くの方は不安や焦りから、十分に状況を整理できないまま判断を迫られてしまいます。しかし、納得できる治療選択を行うためには、まずご自身の口の中で何が起きているのかを正しく知ることが欠かせません。
歯を支える骨の状態、歯の揺れの程度、炎症の範囲などは、見た目や感覚だけでは判断できず、検査結果をもとに理解する必要があります。
現状を把握することで、「なぜ抜歯が提案されたのか」「抜歯回避の可能性はどの程度あるのか」「歯を残す治療を行った場合の見通しはどうか」といった疑問が具体的になります。
治療の良し悪しを決める前に、まず情報を整理することが、冷静な判断につながります。
相談とは、すぐに治療を始めることではありません。現状を知り、選択肢を理解するための大切なプロセスであり、将来を考えるうえでの出発点です。

 

重度歯周病でも選択肢は一つではないという事実

重度歯周病という言葉から、「もう歯を残すことはできない」「インプラント以外に道はない」と感じてしまう方は少なくありません。しかし実際には、重度と診断された場合でも、治療選択が一つに限定されるとは限りません。
歯周基本治療や再評価を経て保存治療が検討できるケースもあれば、条件付きで歯を残しながら経過をみる選択が取られることもあります。
一方で、将来的な安定性を重視して抜歯やインプラントを選ぶ判断が適切な場合もあります。大切なのは、「歯を残すか」「インプラントにするか」という二択ではなく、今の状態に対してどの治療選択が現実的で、長期的に負担が少ないかを考えることです。
重度歯周病の治療は、画一的な答えがあるものではありません。複数の選択肢が存在し得ることを知るだけでも、不安は和らぎ、前向きに相談する気持ちが生まれやすくなります。

 

納得できる治療方針に出会うために大切な姿勢

納得できる治療方針に出会うためには、「任せきり」でも「一人で抱え込む」でもなく、歯科医師と一緒に考える姿勢が重要です。分からない点や不安な点を率直に伝え、「歯を残したい気持ち」「将来への不安」「治療にかけられる時間や通院の頻度」など、自分の考えを共有することが、現実的な治療選択につながります。
また、一度提示された治療方針がすべてではありません。説明が十分に理解できなかった場合や、判断に迷いがある場合には、セカンドオピニオンを含めて情報を集めることも大切です。
焦って決断するよりも、納得できるまで相談することで、結果的に後悔の少ない選択がしやすくなります。
「まずは相談する」という行動は、小さな一歩に感じられるかもしれませんが、将来の口の健康を考えるうえで大きな意味を持ちます。正しい情報をもとに、自分に合った治療選択を見つけていくことが、これからの安心につながります。

 
 
 
埼玉県大宮の再治療0%を追求した
審美歯科セラミック治療ガイド
監修:関口デンタルオフィス大宮

住所:埼玉県さいたま市北区宮原町4-134-24

電話番号:048-652-1182

*監修者

関口デンタルオフィス大宮

院長 関口 亮

経歴

・2008年 日本大学歯学部卒業
日本大学歯学部臨床研修部入局

・2009年 日本大学歯学部補綴学第一講座入局
専修医
顎関節症科兼任

・2014年 同医局退局
関口デンタルオフィス開院

所属学会

日本補綴歯科学会

日本口腔インプラント学会

*スタディークラブ

JSCT(Jiads Study Club Tokyo)

CIDアクティブメンバー(Center of Implant Dentistry)

 

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